パン作りのサンタさん

ちょっと変わったパンの世界

ミキサーの特性(3) ~ 横型ミキサー

パン工場のミキサー

 スーパー等で見掛ける大手製パンメーカーのパンは、どのような機械設備で作られているのでしょうか。

 大きな生産ラインでは、それこそ一度に数百kgのパン生地を捏ねるミキサーが並んでいます。

 その主だったミキサーのタイプは、下図のような横型ミキサーと呼ばれるものです。

 かなりの重量を一度にミキシングする訳ですから、軸やアームには非常に太い金属材料が使用されています。

 また当然のことながら、投入する原材料の総重量も人手で行うにはかなりの重筋作業になってきますので、小麦粉や水などは自動で投入される機能が付与されているケースも一般的になってきています。 

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アームの動き

 それでは、生地を混捏しますアームの動きを見てみましょう。

 アームの構造自体は、どちらかと言いますとシンプルで、横に1本の主軸があり、一般的に2~3本のアームが回転する動作となります。

 過日に解説しました縦型ミキサーやスパイラルミキサーと比較するとパン生地を捏ねる仕様はどうでしょうか。

 アームはパン生地全体をまとめながら、ボウル壁面に生地を当てたり、伸ばしたりしている点では縦型ミキサーに近い動作であることが読み取れます。

 ただし、アームはシンプルに回転するだけですので、ボウルと最接近した時でも圧力を効かせて押すだけではなく、同時に引っ張る動作が加わります。

 そして、パン生地はアームの主軸を中心に回されますから、当然、持ち上げたり、落としたりといった動作になります。

 この持ち上げるという動作は、高さを変えるということだけを見てしまいますと全く意味のない動作と思えるのですが、パン生地を引っ張るという意味では(持ち上げただけで重量が下向きに働きますから自然と引っ張られますので)効率的なのかもしれません。

 そう考えてみますと、本捏ね用としては動作の有意性が認められる横型ミキサーですが、あまり粘性を持たない中種用としては(個人的に)少々疑問点が残ります。

 ところで各アームは、それぞれの長さが異なっており、引っ張る役割や押さえ付ける役割をもって設計されているようです。

 本捏ねでは、生地に粘弾性が出てきてまとまってくると、ボウル壁面に打ち付けるような状態になってきます。

 これは、縦型ミキサーでの操作でも同様の現象が見られ、このような状態になってくるとそろそろ生地の出来具合も最終段階に入ってきます。

 話が少し混捏から逸れますが、最近の横型ミキサーは上図の水色で示したボウル壁面の裏側に冷媒を流して、生地温度を調整できる機能が標準的に付与されています。

 縦型ミキサーとスパイラルミキサーのところで解説しましたが、パンをミキシングする際には、摩擦熱によります温度上昇が起こります。

 その温度上昇を抑えて、規定の温度範囲に収めるための機能です。

ホールセールのパン (3)本間製パン レストラン食パン

レストラン食パン

  日常、私が最もよく食べるパンは食パンなのですが、その中でもポピュラーな角形食パンについて記載します。

 この本間製パンのレストラン食パンですが、**製法といった記載はないものの、普通にトーストして噛んだ時の歯切れの良さと軽さに大満足しています。

 それで、いつも感心するのですが、実に綺麗に焼けています。

 焼色の着色の濃さ、上・側面・底の焼色のバランス、上部角のホワイトラインの出方、等々、特に底面のクラストは、側面とのバランスで厚さが出過ぎたり、焼色は濃過ぎたりし易いのですが、そういった製品を店頭で見た記憶がほとんどありません。

 生産ラインの管理が行き届いているのでしょう。

 それと、なにやら東海地区では業務用食パンのシェア1位だとか…。

 たしかに全国的にもモーニングで有名な東海地区の喫茶店・カフェにあって、本間製パンの包装紙は時々目にします。

 スーパー等の量販店で販売してくれているのが、ありがたい商品です。

 公式サイトの説明文には、『厳選された最高級の小麦粉とフレッシュバターを使用。パンの中でもソフトでホワイト。』との記載が…。

 原材料にも、こだわりがあるんですね。

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知っていましたか?

 パンを裏返しにして底の面を見ると、下図のようなボタンのような、おへそのような跡の凹みを見つけることがあります。

 これってなんだか知っていますか?

 これは、食パンを焼成する時に底に溜まったガスを抜くために食型開けられた小穴の跡なんです。

 決して、変なものが挟まれていた訳ではなく、しっかりと綺麗に焼くための工夫の跡なんですね。

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 でも、製パン器具屋さんで売っている食型には、こういった穴は開いていないのに、どうして?、と思われたかと思います。

 実際に穴のない食型を使っているベーカリーも多いのですし、そのような食型でも概ねきれいな食パンを焼くことはできます。

 穴の開いている食型を使う理由は、…本当に稀なのですが、焼成初期のオーブンキックの際、底に抜けきれないガスが溜まってパンの底面に空洞を作ったり、そこからの熱が通り難くなって火通りが変わってきてしまう事がある為です。

 だったら、どこのベーカリーでも穴付きの食型を使えばいいのに、と思われるかもしれませんが、食型底面に穴を開けると塗った離型油が浸み出してきて、オーブンを汚してしまう、あるいはオーブンそのものの故障も起こしかねない不具合をも発生させてしまいます。

 ですから、稀に発生する製品形状の不具合と製パン設備の衛生&メンテナンス上の課題を天秤にかけて、各ベーカリーは難しい選択を迫られているのです。

冷凍パン生地 ~ コンピューター・シミュレーション①

数値シミュレーション

 パンの焼成であろうと、冷凍であろうと、生地内部で実際に起きている現象を目で見て確認することは非常に困難を伴います。

 こんな時は、コンピューターを使ってシミュレーションしてみると、指標の一つとして使えることもあります。

 下の図ですが、食パン用の玉生地を冷凍庫で冷凍した時の断面の内部温度分布を計算したものです。

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パラメーター 

 プログラムには、いろいろな条件を入力して 計算させることが可能です。

 ここでは、例えば、生地重量と形状、生地を載せるトレーの材質や厚み、トレー1枚当たりの生地数量、冷凍庫内の温度や風速、といったものです。

 そして計算するには、パン生地が持っている熱物性値がデータとして必要になってきます。

 それは、比熱、密度、熱伝導率、凍結時の潜熱といった物質固有の物性値です。

 細かいことをお話ししますと、それらの熱物性値は温度によって変化します(温度依存性)ので、温度の関数として計算式に与えてやらなければなりません。

シミュレーション結果

 さて、上の図に話を戻しますと、パン生地を載せるトレーには一般的なアルミニウム製のトレーを想定してシミュレートしてみました。

 アルミニウムは非常に熱伝導性の高い金属ですので、トレーを介してパン生地から熱が伝わることは十分に想定できます。

 この図の時間は、パン生地の一部が最初に凍結した時点を取っています。

 このパン生地は、トレーに接している生地底面部分が早く凍っているのが分かります。

 そして、この図は最終的に生地全体が凍結する時の内部温度分布を示したものです。

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 どうやら、パン生地の中心部というよりずいぶん生地の上部が凍結しきれないで残っている状態のようです。

 この状態は同条件でパン生地を冷凍してみて、実際に本当に生地は底面から凍っているのか、その後、生地の上面は凍結が遅れて未凍結の状態で残っているのかを確認しています。

 このようにパン生地を冷凍した時の生地内部におけます温度分布の変化が推測できるようになりました。

 そうなりますと、次のアクションは、この計算結果をどのように活用するかといった事が焦点となります。

 実は、結構、この計算結果は使えます。

 先に記載しています、パン生地内部におけます最低到達温度の分布や凍結速度の分布まで求めることができます。

 加えて、一定温度以上にパン生地全体を維持した条件で、凍結速度を速めるための温度変化とかを求めたり…。

(続く)

 

 

 

 

冷凍パン生地 ~ 最低到達温度と酵母の失活

課題

 冷凍生地の障害について述べる時、評価方法として『一定の保存温度&保存期間の後、凍結前の生地と比較してガス発生量が**%でした』といった表現を未だに耳にします。

 ところで、この表現で酵母の評価ができるでしょうか。

 温度が変動して、更に保存期間が異なった時に十分に活用できるのでしょうか。

 最近でこそ減りましたが、以前はいざ使おうといった時に全然発酵してこないといったトラブルが頻発していました。

 酵母の緩やかな発酵力の低下だけであれば、このようなことが起こるでしょうか。

 下のグラフを見て下さい。

 これは、一般的なパン酵母(冷凍耐性酵母ではありません)で生地を仕込み、-10℃で

凍結後、異なる温度で保存して解凍後のガス発生量を調べたものです。

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 ちなみに、未凍結のパン生地では-10℃で1時間保存のガス発生量とほぼ同等です。

 グラフに戻りますと、1時間保存でも、6日間保存でも、ある保存温度を境にガス発生量が顕著に低下していることが分かります。

 酵母は、冷蔵状態でも日を追ってガス発生量が低下します。

 決して、冷凍生地に特有の現象ではないんです。

 私が言いたいのは、発酵の時のガス発生量の低下率を見るだけではなく、障害を起こす温度を特定してくれた方が格段にその酵母の取扱いは容易になるということです。

 酵母が障害を起こして失活する条件(温度、凍結速度、等)が分かれば、いかに冷凍障害を抑えて冷凍生地を使えるか、といった対応策にもつながってきます。

 また別の展開としましても、どのような機能が有効か、装置の改良や開発につなげていくこともできるでしょう。

 今回のグラフは、一般的なパン酵母を使ったテストの結果ですが、近年では冷凍耐性を持った、冷凍生地製パン法に適した酵母も多く開発されています。

 私の知る中では、冷凍耐性を持った酵母の失活温度は-30℃を下回る菌種もあり、ずいぶん使い易くなってきていることを実感しています。

 ただし、これでも汎用性の単段式冷凍機の溶媒の蒸発温度は-40℃程度ですから、真冬の寒い日などに冷凍する場合には冷え過ぎて解凍後のパン生地が十分に発酵しないといった状況が起こらないとは限りません。

 『設定温度を-30℃にすれば、いいのでは?』と思われる方もいるかもしれませんが、一般的な冷凍庫では冷気の噴出し口と温度センサーの場所はある程度の距離があります。

 頻繁な入切を防ぐためです。

 つまり、冷凍庫内を制御するポイントは指定の温度にコントロールされていても、庫内のすべての場所において、その温度が保証されている訳ではないのです。

 

街のパン屋さん ~ はやしぱん 大納言バゲット

興味をそそられるパン

 私は仕事柄、原材料へのこだわりを謳っている商品に対してはあまり興味を示すことがありません。

 別に厳選された原材料を嫌っている訳ではないんです。

 こだわっているところが作り方に偏っていることは自覚していますので、街のパン屋さんへ行っても、小麦の原産地や天然酵母といったことよりも、どうしても窯伸びは適正か、シート生地の層はきれいに出ているか、内相は細やかにできているか、など品質的なところに目がいってしまいます。

 ただ、乳化剤や生地改良剤などを使用していないパンに関しては、同じ配合の観点であっても、それらの原材料を使用しない製造上の不都合をどのように他の方法で克服しているのかといったことに興味をそそられます。

 あとは、どうしたらこんな形状のパンができるのだろう…とか、見た目に映えるパンであれば、成形方法を考えさせられるようなパンには食い付きがいい方だと思っています。

大納言バゲット

 名古屋市名東区のはやしぱんで作られています大納言バゲットには、一見、ハード系の生地に単に大納言小豆が巻かれている製品と映ったのですが、よく見てみると、見えている大納言小豆は、すべてクープの切れ間から見えています。 

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 一般的なバゲットは薄く伸ばした生地を巻いて棒状の成形をすることはなく、玉生地に近い形状から表皮を張りながら棒状に成形しますので、おそらくこのバゲットは別の成形方法で作っていることは想像に難くありません。

 では、生地を締めるエンドをしっかりと結着させて、1層の生地で大納言小豆を包む方法は?、と考えてしまう訳です。

 クープで開く程度の表層生地の薄さで包むので、少なくとも大納言小豆を巻く部分は相当の薄さにしていないと焼成後きれいに切れ間から大納言が顔を出すことができなくなってしまいます。

 それと細かいところですが、玉生地をそのまま伸ばした楕円の生地では、どうしても両サイドが細くなって大納言小豆の巻く量が少なくなってしまいます。

 生地全体に均一な大納言小豆を分散させるには、通常のバゲットのように四角に近い延展の生地に大納言小豆を巻いてロール成形する必要があるのでは、と想像してしまいます。

 あと、クープの数が6つと多いですね。

 一般的な3つのクープでは割れ目が大き過ぎて、そこから大納言小豆がこぼれ落ちてしまうからでしょうか。

 ひとつの製品からでも、いろいろな想像はできるもので、そんなことを考えてみるのも面白さのひとつだと思っています。

 今度、別の機会に自分でも作ってみて、確認してみたいと思っています。

 モノ造りのノウハウというのは、こんな興味本位のところから始まるのかもしれません。